私は長い間糖質制限を実践し、新たな情報に触れたり、多くの方からの相談を受けていますが、糖質制限をすると痛風が悪化する(尿酸値が上がる)という意見を度々耳にすることがあります。
そんな噂が独り歩きしていることから、糖質制限ダイエットに興味はあるが、尿酸値(痛風)が怖くて行動に移せないという方が意外と多いんです。
確かに、穀物と比較すればプリン体を多く含む肉や魚を主食とする糖質制限食では、プリン体の摂取量が多くなるのは事実です。
ですが、私の周りの糖質制限ダイエットに成功した全ての方が、尿酸値の値は確実に下がりました。
ということは、食事以外にも痛風(尿酸値上昇)の原因があると考えられますよね。
そこで、今回は痛風のメカニズムについて詳しく解説し、痛風が怖くて糖質制限ダイエットに踏み切れないあなたに、明るい光を差し込みたいと思います。
目次
痛風、高尿酸血症とは?
まずは基本的なことからお話していきます。
痛風とは、
体内で過剰になった尿酸(プリン体が体内で分解されてできる物質)が関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じるという病気です。
正常な状態では尿酸の産生量と尿中への排出量のバランスが保たれていますので、尿酸は血液中に溶け込まれています。
ですが、尿酸の産生が過剰になったり、尿中への排出量が低下すると血液中の尿酸の値が高くなってしまいます。
その症状を医学用語では、高尿酸血症と呼びます。
そして、過剰になった尿酸は溶けきらずに結晶となり、体のいろいろな部位(主に関節)に集積しはじめます。
本来、尿酸は結晶としては存在しませんので、白血球は正常な機能として、尿酸の結晶を異物ととらえ、排除しようと攻撃するのです。
その時に伴う炎症、激痛が痛風発作なのです。
有名な話ですが、患部に風が吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから『痛風』と名付けられたといわれています。
これだけでは、まだ痛風について深く理解することは難しいですよね。
そこで、ここでの解説で何度も出てきた『尿酸』という言葉と、その元となる『プリン体』について、詳しくお話していきます。
※一部重複する部分がありますが、ご了承ください。
プリン体とは?
プリン体とは細胞中に含まれる遺伝子の構成成分で、人間の生命活動に必要不可欠なものです。
※痛風の根本的な原因成分ということで、悪の根源と思われがちな成分ですが、プリン体がなければ、人は生きてはいけません。
そして、プリン体の発生源は二つあり、一つは食事から摂取されるもので、全体の2~3割、もう一つは体内で作られるもので、7~8割を占めています。
その中で、体内で生成されるプリン体は、細胞の新陳代謝、エネルギー代謝によって生まれます。
難しい話になりますが、新陳代謝やエネルギー代謝が進むと古い細胞の核酸からプリン体が放出されるため、体内にプリン体が産生されるということです。
続いて、このプリン体が分解されて生まれる尿酸についてですが・・・
尿酸とは?
尿酸とはプリン体が分解されて(主に肝臓で)生成される老廃物の一種で、尿中から排出されます。
正常(健康)な状態では、体内で作られる尿酸の量と尿中から排出される尿酸の量が同じであるため、血液中の尿酸は正常な値が保たれます。
ですが、体内での尿酸の産生量が多すぎたり、尿中への排出量が低下した場合、血液中の尿酸値が高くなってしまいます。
これで、
体内のプリン体が過剰にる → 血液中の尿酸値が上がる → 痛風の発作が生じる
という流れがわかりましたね。
では、どうすれば痛風を予防できるかを考えていきましょう。
痛風の予防、尿酸値を下げるためには?
食物からのプリン体摂取量を減らす
体内のプリン体が過剰にる
→ 血液中の尿酸値が上がる
→ 痛風の発作が生じる
この流れから簡単に想像できる予防法としては、まず
体内のプリン体が増えないように、プリン体の摂取量を減らす。
ということが挙げられると思います。
実際に尿酸値に不安のある消費者をターゲットにした『プリン体ゼロ』のビールや発泡酒が多く発売されていますね。
ですが・・・
体内のプリン体は、7~8割が体内で産生されたもので、食物から摂取されたものは、全体の2~3割にしか過ぎません。
もちろん、プリン体の摂取量を減らせば、尿酸値減少の効果は期待できますが、それはたいした数字ではありません。
大きく改善することは見込めないのが現実です。
もちろん、摂取量が少ないに越したことはりませんが、仮にプリン体を過剰摂した場合でも、その多くが腸内で分解されて排泄されます。
諸説ありますが、食物から摂取するプリン体の量が尿酸値に影響する割合は、1~2割程度と言われているのです。
では、どうすれば尿酸値を下げることができるのか?
最もシンプルな方法をまずお話します。
単純に体重を減らすことで尿酸値は下がる?
食物からのプリン体摂取量が、尿酸値の上昇にたいした影響がないということは、
・体内での尿酸の産生量が多すぎる。
・尿中への排出量の低下。
という2つが主な原因だと考えられますね。
では、まず、体内での尿酸の産生量について考えてみましょう。
※産生 ・・・ 細胞で物質が合成・生成されること。
例文 ・・・ 『抗体が産生される』
生産の間違いだろ?って思う方もいるかもしれませんが、(私もそうでした)、産生という表現が正しいそうです。
体内での産生量を減らすには・・・
ずばり、シンプルに痩せればいいんです。
体内で生成されるプリン体は、細胞の新陳代謝、エネルギー代謝によって生まれます。
体重が増えるとエネルギー代謝量が増えますよね。(筋肉量にもよりますが、体重50キロの人と80キロの人では、エネルギー代謝量は違いますよね。)
そして、エネルギー代謝量が増えるとエネルギー代謝によって生まれる尿酸も当然増えることになります。
ということは・・・
その反対に、痩せれば・・・
正解です。
痛風とは、遺伝的要素も大きく簡単には言い切れない病気ではありますが、ご存じの通り、痛風(尿酸値)に悩まされている方の大多数が肥満傾向にありますよね。
冒頭で、私の周りの糖質制限ダイエットに成功した全ての方が、尿酸値の値は確実に下がりました。
と言いましたが、この方たちはダイエットに成功して、痩せたら尿酸値も下がったという方ばかりです。
つまり、とりあえず痩せてみればいいんです。
大多数の方が、痩せれば尿酸値は下がります。
それでも下がらなければ、また違う方法を考えればいいんですよ。
痩せるということが最もシンプルで効果的な方法に間違いはありません。
医学的治療においても、現代ではプリン体の摂取量の制限以上に、総摂取カロリーの制限を推奨するようになっていますからね。
続きまして、尿酸値上昇のもう一つの大きな原因である、
尿中への排出量の低下。
について考えていきます。
尿酸の排出量低下を防ぐには・・・?
実は、尿酸の排出量低下が尿酸値上昇の最も多い原因で、約60%と言われています。
ちなみに、尿酸の過剰産生によるものが、約10%で、どちらの要因も併せ持つ混合タイプが、約30% と言われています。
では、どのようなことが原因で、尿酸の排出量が低下してしまうのでしょうか。
残念ながら、遺伝的な要因も大きいと言われていますが、それ以外では、肥満や腎臓の機能低下、水分不足、アルコールの過剰摂取によっても起こります。
まずは、水分不足について考えていきます。
水分不足を解消しよう!
体内の水分が不足すると、血液が濃くなりますよね。
血液の約80%は水分ですので、体内の水分濃度は、血液の濃度に大きく影響を与えます。
血液は酸素や栄養素を身体中に送ったり、老廃物の排出する(送る)という非常に大切な役割を担っています。
その血液の濃度が高く、ドロドロの状態では、大切な機能が低下してしまいます。
つまり、水分不足によってドロドロになった血液では、老廃物(尿酸)を出し切ることができません。
その結果、体内(血液中)の尿酸は増え続け、結晶化してしまうのです。
これについての解消法は簡単です。
水をたくさん飲めばいいんです。
水をたくさん飲めば、血液はサラサラになり、尿の量も増えますから、ダブル効果で尿酸の排出量は増えます。
水と言っても、カロリーや不純物を含まないミネラルウォーターでなければダメですからね。
糖質制限ダイエットでは『たくさんの水を飲む』ということを強く勧めていますので、みなさんは心配無用でしょう。
では、続いてアルコールについてです。
耳が痛い方も多いとは思いますが、これは間違った解釈をしている方が非常に多いので、我慢してでも読んでくださいね。
アルコールと尿酸値の関係 ビールだろうが焼酎、ウィスキーだろうが、アルコールはアルコールです!
と勘違いしている方が非常に多いのですが・・・
アルコールは、それ自体が体内での尿酸産生を増加させるだけでなく、尿中への尿酸の排泄を阻害し尿酸を体内にとどめるという非常に厄介な成分です。
ビールだろうがハイボールだろうが酎ハイだろうが関係ありません。
お酒(アルコール)自体が問題なんです。
さらには、アルコールを分解するには体内の大量の水分が使われます。
飲み過ぎて寝た後、夜中に異常な喉の渇きで目覚めたことがありますよね。
それは、体内でアルコールを分解する過程で、大量の水分が失われた結果なのです。
というわけで、過度なアルコールの摂取は、
体内での尿酸産生を増加させるだけでなく、尿中への尿酸の排泄を阻害し尿酸を体内にとどめるというアルコールの作用に加えて、体内の水分不足のダブルパンチを喰らってしまうということです。
なんか、文章にすると恐ろしいですね。
お酒好きの私としても心苦しいですが、これが真実ですのでしっかり受け止めて、せめて週に何日かは『飲まない日』を作る努力をしましょう。
では、最後に痛風の予防法と、糖質制限の関係をまとめてみます。
まとめ 糖質制限と痛風の関係、予防法
『糖質制限をすると痛風になる(尿酸値が上がる)』
諸説あると思いますし、反対意見もあると思いますが、私としては、糖質制限ダイエットは、痛風の改善、尿酸値の低下には最適な方法だと考えます。
理由としては、
・ダイエット効果(減量効果)の速さ
・多量の水分摂取
この二つが大きな要因になります。
逆に、糖質制限ダイエットによって痛風が悪化、尿酸値が上がる要因も挙げておきます。
こちらは、
・プリン体の過剰摂取
・激しい筋トレによるプリン体の過剰産生
が考えられます。
食事(プリン体の摂取量)が尿酸値に与える影響は少ない(約1割~2割)ですが、たかが2割と言っても、バカにはできません。
さらには、一般的に糖質制限では、糖質を含まない蒸留酒(焼酎やウィスキーなど)ならOKとされています。
OK と言われて、ついつい飲み過ぎてしまう方って多いですからね。
やはり食習慣を無視することはできませんね。
また、激しい運動でのエネルギー代謝では、通常のエネルギー代謝よりも多くのプリン体が産生されますので、現在尿酸値に不安のある方で、糖質制限ダイエットと並行して筋トレに力を入れている方は、定期的な血液検査をお勧めします。
これらのことを踏まえて、どうでしょうか?
これでも、糖質制限をすると痛風が悪化する(尿酸値が上がる)と思われますか?
実際に糖質制限で尿酸値が上がったという方は、糖質制限以外の原因を考えてみてください。
水分摂取量が少なかったのかもしれませんし、お酒の飲みすぎが原因かもしれません。
残念なことですが、遺伝的要因や腎機能の低下が原因の可能性もあります。
糖質制限に興味があって、これからダイエットをしようと考えているのなら、痛風を怖がらずに糖質制限ダイエットに取り組んでみてはいかがでしょうか?
痩せることによって、かなりの確率で尿酸値は下がりますから。
別に糖質制限でなくとも、尿酸値に不安のある方は、まず水をたくさん飲みながら痩せてみましょう。
とりあえず、これが一番の近道です。
最後に・・・
※現在痛風によって通院されている方については、必ず担当医師の方と相談してくださいね。